離婚するので住宅ローンの名義を変更したい
目次
「離婚するので住宅ローンの名義を変更したいけどできるのか?」

離婚することになった夫婦では、このようなローンの名義の悩みはよくある問題です。実際、離婚とともに任意売却のご相談に来られる夫婦がたくさんいらしゃいます。
「夫と妻の二人が住宅ローンの名義人になっており、離婚後は夫婦のどちらか一方が家に住み続けるため、住宅ローンの名義人も一人に変更したい・・・。」
離婚した後に家を出て行く身としては、元夫婦と言えど、やはりもう名義人としてローンの責任は負いたくないのは当然ですね。
そもそも住宅ローンとは、銀行(金融機関)と申込者との「金銭消費貸借契約」と呼ばれる契約です。将来的にローンを完済すること、あらかじめ決まっている家(不動産)を買う、かつ、その家(不動産)を担保とすることを条件としてお金を借りる契約です。
通常、住宅ローンを組むには、銀行などの金融機関にローンを申し込んだ後に、審査があります。申し込んだ人に対して「安定した収入があり、今後問題なく名義人として毎月ローンを返済していけるのかどうか?」を調べるのです。その結果、名義人として住宅ローンを組めることになります。
また、その際に連帯保証人として契約にかかわっている場合があります。連帯保証人も同様に審査を受けています。
そのため、「もう夫婦ではない」とか、「離婚する」と言えど、住宅ローンの名義人は簡単には変更できません。
ただし、難しいといえども厳しいハードルを越えていけば、ローンの名義を変更することは不可能ではありません。
その点を踏まえたうえで、離婚にかかわる住宅ローンの名義変更について、連帯保証人や任意売却を絡めて説明していきます。
1.そもそも住宅ローンの名義人とは一体どういうもの?
住宅ローンの名義変更を考える前に、そもそも「住宅ローンの名義人とはなに?」ということを理解しておきましょう。
不動産や住宅ローンにかかわる名義人には、主に次の3つがあります。

名義人① 家(不動産)の名義人
家(不動産)の名義人とは、土地と建物のそれぞれの所有者のことです。住宅ローンの名義人とは別物です。
つまり、売却するなど、家(不動産)を処分する権利を持っている人ですね。
マンションの場合は、土地と建物部分が一体となっているので、両方とも名義人が同一人物になっていることがほとんどです。ひとりの場合、夫婦二人の場合などがあります。
一方で、一戸建ての家の場合は、土地と建物部分の名義人が分かれているケースがあります。
例えば、「土地の名義人=夫の父、建物の名義人=夫」というような分かれ方です。
その他にも、夫婦で土地、建物ともに2分の1ずつ名義を分け合っている、または、家を相続した結果として兄弟や家族で細かく分け合っているケースがあります。
このように夫婦などで分け合っている部分を「持ち分」と言います。持ち分は夫婦が離婚した後も自動的に変更することはありません。
任意売却をする場合、この名義人全員の同意と記名・捺印が必要になります。
土地と建物の名義人は、登記簿謄本で確認ができます。
名義人② 住宅ローンの名義人
住宅ローンの名義人とは、家を購入する際に金融機関に住宅ローンを申し込んだ人のことです。つまり、住宅ローンの返済義務を負っている人です。家(不動産)の名義人とは別です。
これも登記簿謄本を見ることで確認することができます。
夫がひとりで名義人になっているケース、夫婦二人が名義人になっているケース、家族数名で名義人になっているケースなど、いろいろな名義のパターンがあります。
2人以上が住宅ローンの名義人になっている場合、それぞれ連帯債務者となっていることがほとんどです。連帯債務者とは、それぞれがローン全額の返済義務を負っている人のことです。
例えば夫婦二人が2,000万円の連帯債務の契約をした場合、夫婦二人ともそれぞれ2,000万円の返済義務を負います。
家(不動産)の名義人と同様に、夫婦が離婚したとしても連帯債務者が変更されることはありません。任意売却をする場合、やはりこの名義人全員の同意が必要です。
名義人③ 連帯保証人

連帯保証人とは、文字通り、債務者(住宅ローンの名義人)を保証する人です。ただし、連帯保証人は単なる保証人より重く、ローンの名義人と同等の責任を負います。
極端な話ですが、連帯保証人は、金融機関からローンの返済を請求された際に、「先に名義人に請求しろ」(=催告の抗弁権)とは言えない、「先に名義人に財産を処分させろ」(=検索の抗弁権)とは言えません。
通常、金融機関は以上のような無茶なことはしませんが、名義人が住宅ローンを滞納した場合は連帯保証人にローンの返済を請求します。また、名義人の不動産を売却してもなお住宅ローンの残額がある場合は、連帯保証人が残額を返済しないかぎり、金融機関は連帯保証人の不動産を競売にして残額を回収します。
このように、連帯保証人は名義人と同等の非常に重い立場にいるため、夫婦が離婚したからといって簡単には変更する、または、外すことはできません。
任意売却をする場合は同意を得る必要があります。
2.住宅ローンが残ったままで、住宅ローンの名義変更はできる?
さて、いよいよ本題となります。
離婚するならば、住宅ローンの名義人もそれに合わせて変更したいところですが、現実的には変更は非常に難しいと言わざるを得ません。
通常、銀行などの金融機関が住宅ローンを融資するのは、「その家に住宅ローンの名義人が住み続ける」かつ「毎月のローンの返済が可能な収入状況」ということを条件としています。(連帯債務を含む)
つまり、あくまで住宅ローンを申し込んだ「個人」をもって判断して融資しているのです。「夫婦」であることは重要ではありません。
そのため、銀行や金融機関としても、たとえ夫婦でなくなったから、または、離婚するからといって、簡単には名義を変更することは認められないということですね。

これらを踏まえると、夫が名義人となっている住宅ローンを、「離婚の後は妻が住み続けるので住宅ローンも妻の名義に変更したい」といった場合、専業主婦やパート勤務ですと、まず銀行は承認しないでしょう。
少なくとも、正社員、かつ、夫と同水準の収入が最低限必要となり、そのうえで変更を承認してもらえるかどうかという場合がほとんどです。
やはり厳しいですね。
ただ、逆に言えば、妻が正社員として数年勤務しており、かつ、安定的に夫並みの収入を得ている状況で、これらの厳しいハードルを越えることができるのならば、離婚後に住宅ローンの名義変更もできる可能性があるということです。
また、連帯保証人の変更についても、同様に審査されたうえの契約になっていますので、住宅ローンの名義人と同じくハードルは高いと言えます。
3.他に住宅ローンの名義変更をする方法はないのか?
ここまでで、銀行や金融機関に申し出て、住宅ローンの名義人を変更することは難しいことが分かりました。
次にそれ以外の方法について解説していきます。
①離婚した後に、夫から妻(または、妻から夫)に家を売却する

離婚して、夫婦が他人同士になった後、「夫が売主、妻が買主」(またはその逆)となり家(不動産)の売買(任意売却を含む)をする方法です。
この場合、妻(または夫)が現金を用意するか、または、新たに金融機関で住宅ローンを組みます。数十年前と比べると、住宅ローンの金利はかなり低くなっているはずなので、金利次第では有効な方法と言えます。
ただし、注意点として、元の金融機関に住宅ローンの残額すべてを返済できることが条件となります。
例えば、次のようになります。
(※不動産売買にかかわる諸費用については考えないものとします。)
(1)住宅ローンの残額:2,000万円、売買価格:2,000万円以上
この場合、何も問題ありません。
(2)住宅ローンの残額:2,000万円、売買価格:1,500万円
妻(または夫)が銀行から借りられる金額が住宅ローンの残額に届かない場合があります。
これは、銀行が一般的な市場相場を考慮したうえ、その不動産の担保価値を計算して融資額を決定するためです。
この場合は、差額の500万円を用意する必要があります。
もし、差額分が用意できない、かつ、夫婦が離婚した後に、妻(または夫)ひとりでは住宅ローンの返済が難しいとなれば、競売になり共倒れになる可能性があります。その場合は、任意売却を検討しましょう。
②他の金融機関で住宅ローンを借り換える

元々住宅ローンを組んでいた金融機関に対してローン全額を完済するため、他の金融機関で住宅ローンを組む方法です。借り換えによって住宅ローンを完済すると、元々のローンの名義は外れます。(連帯債務も同様)
売却する場合と同様、借り換えも金利面で有利になる可能性があるため検討する価値はあります。
注意点としては、借り換えも、新たに金融機関で住宅ローンを組むため、やはりローン審査をパスする必要があります。
4.離婚にかかわる住宅ローンの名義変更の問題点とは
夫婦の離婚にともなって住宅ローンの名義人を変更する、または、外すことは難しいものの決して無理ではないことがご理解いただけたかと思います。
また、その他の方法として、「売却(任意売却)する」「借り換える」等の方法があり、それぞれに条件がありました。
そのうえで、離婚がかかわる住宅ローンの名義変更の問題点は、「名義変更できなかった場合にどうするか?」ということを考える必要性です。
離婚後も夫婦のどちらかが引き続き住宅ローンを返済し続けることができるのならば大きな問題になりませんが、ローンを滞納する可能性があるのならば任意売却を検討しましょう。
また、連帯保証人についても事前に確認しておきましょう。いざ相手側がローンを滞納してしまってから、「自分が連帯保証人になっていた」と気が付き慌てて任意売却のご相談に来られることがめずらしくありません。
夫婦ともに、事前に知っておくことで、万が一のときに備えることができます。
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