老後破産の原因と対策
老後破産の引き金で多いのは住宅ローンや税金の滞納です。しかし、原因はそれだけではありません。ここでは、ご相談で多い老後破産の原因とそれを防ぐための対策をお伝えします。
- 老後破産の原因
- 1.のしかかる教育費!子供ひとり最低3000万円
- 2.生涯未婚率上昇も家計を圧迫
- 3.離婚した子供が孫を連れて帰ってくる
- 4.晩婚化に伴う老後破産の危険
- 老後破産の対策
- 1.事前の計画
- 2.老後破産を防ぐための任意売却
老後破産の原因(1)子供ひとり最低3000万円の教育費!
憧れのマイホーム、夢のマイホームと揶揄される時代がありました。しかし、そのマイホームが老後破産へのアクセルとなっているのが現実です。
住宅ローンは通常35年ほどの長期ローンで、人生をかけて返済していくといっても過言ではありません。家を買ったとき、住宅ローンを組んだとき、途中で返済ができなくなるなんて、誰も想像すらしません。
全日本任意売却支援協会に相談に来られる方の中にも「貯金して繰上げ返済」または「退職金で全額返済」そう信じていた人も多くいます。
しかし、現役時代は出費の連続です。その多くを占めるのが教育費です。子供を大学まで卒業させるには、幼稚園から大学まで全て公立で1000万円、全て私立で3000万円といわれています。
またこれに日々の生活費などを入れると、子供ひとりを育てるのに最低3000万円、高い人なら6000万円と言われています。
大学を卒業する22歳までにかかる費用が3000万円であれば、1年間に136万円。1ヶ月11万3000円になります。子供ひとりでこの金額です。子供が二人ならば、この倍になりますから、結構な金額になることは容易に想像できます。
現役時代にしっかりと貯蓄をして老後に備えるのが理想ですが、子供ひとりあたり3000万円もの負担があると、一般のご家庭で老後に備えての貯蓄はそう簡単ではないようです。
老後破産の原因(2)生涯未婚率上昇も家計を圧迫
意外に思われるかもしれませんが、老後破産の原因として「高い生涯未婚率」があります。子供(多くの場合は息子)が独身で、子供の分まで生活費が必要な家庭も多くあります。子供と言っても既に30代、40代です。
学校を卒業して就職をしたものの退職し、職を転々とし年齢を重ねたことで再就職が困難となり、無職のままでいるというケースです。成人した子供の養育がシニア世代の生活を圧迫する可能性があるのです。
(参考)性別生涯未婚率
年次 | 男 | 女 |
---|---|---|
1965年 | 1.50% | 2.53% |
1970年 | 1.70% | 3.34% |
1975年 | 2.12% | 4.32% |
1980年 | 2.60% | 4.45% |
1985年 | 3.89% | 4.32% |
1990年 | 5.57% | 4.33% |
1995年 | 8.99% | 5.10% |
2000年 | 12.57% | 5.82% |
2005年 | 15.96% | 7.25% |
2010年 | 20.14% | 10.61% |
<国立社会保障・人口問題研究所「人口統計資料集(2014)」>
上がり続ける生涯未婚率、男性の20%超、女性の10%超が生涯未婚。
老後破産の原因(3)離婚した子供が孫を連れて帰ってくる
シニア世代の生活を圧迫する原因には、結婚して出て行った子供が離婚をして戻ってくるというケースもあります。これは断然、女性が多いです。その多くが子供(孫)を連れて戻ってきます。
自分たちだけでもぎりぎりの生活であるにも関わらず、娘と孫の分の生活費が家計を圧迫するのです。
子供が巣立ち、定年退職してそれ相当の退職金を手にしたとしても、今度は孫の分の教育費がのしかかってくると、余程の蓄えがないと家計は持ちこたえることができません。
以上のようなことから、主に次の①から④が要因で、出費がかさんでしまします。
① 自分や妻の医療費
② 子供の家族の生活費
③ 孫の教育費
④ 住宅ローンや維持費
まさか、まさかの4重苦です。中には、これに年老いた自分の親の介護費も加わる場合もあります。現役世代よりも支出が多くなってしまうケースも珍しくありません。
わずかな年金の収入の家計が、老後に破綻するのは時間の問題となってしまうのです。
老後破産の原因(4)晩婚化に伴う老後破産の危険
老後の生活にゆとりがなくなる原因には「晩婚化」も挙げられます。結婚時期が遅いことで、その分マイホームの購入時期が遅くなり、定年後も長く住宅ローンの返済に追われる、一番お金がかかる時期と定年が重なる・・・ということが起こりえます。
厚生労働省から発表されているデータによりますと、昭和45年の初婚年齢は、男性が26.9歳、女性が24.2歳です。
徐々に晩婚が進み、昭和60年には男性が28.2歳、女性が25.5歳となり、更に平成17年には、男性29.8歳、女性28.0歳、直近の平成21年には男性は30.4歳、女性28.6歳となっています。
統計を取り始めた40年間で、男性が4.5歳、女性が4.4歳、初婚年齢が上昇しているのです。
※厚生労働省発表
また、晩婚化と並行して、当然ながら晩産化も進んでいます。
政府発表の「人口動態統計」によりますと、昭和50年の第一子の平均出産時年齢は、25.7歳、10年後の昭和60年に26.7歳、更に10年後の平成7年には27.5歳、平成17年は29.1歳、平成25年には30.4歳と30代に突入しました。40年で4.7歳も晩産化になったのです。
※内閣府発表
老後破産の対策(1) 計画を立てる
老後破産を未然に防ぐためには、収入と支出のバランスを事前に把握し、対策を立てておくことが大切です。
収入が年金中心になるのか、定年後も再就職するのか、といったことも計画しておくと安心です。年金の受給額についてはあらかじめ年金事務所に確認しましょう。「思ったよりも少なかった」となってしまわないことが肝心です。
また、事前に加入している保険を再度確認しておくことも大切です。年金型の保険への加入有無、医療保険が終身保障になっているかどうかというのは、見逃しがちですが、大切です。60歳以降は男女問わず医療費がかかる時期でもあります。保険でどこまでカバーできるのかを把握しておきましょう。
老後破産の対策(2) 老後破産を防ぐための任意売却
人生設計をしていてもその通りに進むとは限りません。たとえぎりぎり老後の暮らしを送れたとしても、病気や不可欠なリフォームが発生した等に対応できないければ安心できません。また、既に住宅ローンや税金などの支払いに困っている方もいらっしゃるかもしれません。
全日本任意売却支援協会では、最近、老後破産に関するご相談が増えています。一緒にしっかり対策を立てるとともに、自宅から引っ越すことなく解決を行うリースバックの提案もしています。
リースバックの活用
<任意売却・リースバックで住居維持にかかる負担を軽減>
すでに住宅ローンや税金(固定資産税や健康保険料)の支払いが難しいという方もいらっしゃると思います。
住宅ローンがオーバーローンであったり、税金の滞納額が大きい方の場合には、任意売却をした上で住み続ける方法(リースバック)は有効な解決方法です。
任意売却は住宅ローンの滞納があったり、税金の滞納による差し押さえがある場合に、債権者(金融機関など)と話し合いをしながら行う「お家の売却」です。
ただ、「長年住み慣れた家に住み続けたい」という思いを強く持っている方は多いのではないでしょうか?そこで、任意売却と合わせてリースバックを行います。
リースバックは自宅を第三者に売却し、その買い主に家賃を支払う形で住み続ける方法です。住宅ローンや固定資産税の支払いから解放されることで、月々の住居維持費が軽減されます。
<リースバックで老後資金を得る>
「毎月の返済はできているけど、老後の暮らしにゆとりがない」という方はリースバックで老後資金を得るのもひとつの方法です。リースバックは前述のとおり、自宅を第三者に売却し、買い主に家賃を払うことで住み続ける方法です。売却代金から住宅ローンの残額を返済し、残った現金についてはまとまった資金として利用することが可能です。
高収入でも安心できない?老後破産
現役世代の時に高収入の方でも安心できません。その収入の多さから貯蓄を怠り、老後の準備をせずに定年退職を向かえ、収入が途絶えて慌てふためいても、どうしようもないという状態になるからです。
退職金で住宅ローンの全額を支払う予定の人も多くいます。しかし、少子高齢化が進み年金の給付水準が下がる一方で、年金だけを頼りに暮らしている家庭がほとんどです。ある統計によれば、夫婦ふたりの老後の生活資金として3000万円は必要というデータもあります。
政府発表の家計調査年報によると、60歳以上の生活費は、月238,485円と算出されています。
年間300万円ほどの額になります。ちなみに住居費は年間20万円ほどと計算されていてこの額です。年間20万円ということは、住宅ローンを抱えていないと想定されます。
それでも年間300万円です。80歳までの平均寿命で計算すると、60歳から80歳までの20年間で6000万円が日常の生活費だけで必要となるのです。
全日本任意売却支援協会に相談者に来られる多くの方は「もう少し若ければ・・・」と若い頃と同じように働けないことを嘆かれます。
高齢者になってから生活に困窮すると、再就職もままならず、出費だけがかさみ、取り返しが付かない事態になってしまうのです。取り返しのつかない状況にならないためにも、しっかりと対策をしましょう。