自己破産とは
当協会では、自己破産についてご相談いただくことが多いです。「任意売却=自己破産」とお考えだからです。このページでは、自己破産についてできるだけ分かりやすく解説していきます。
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この記事を書いた人
安田 裕次
全日本任意売却支援協会
代表理事
①そもそも自己破産とは
②自己破産の4つのメリット
③自己破産の6つのデメリット
④自己破産すべきかどうかの4つの判断基準 ⑤自己破産の9つの流れと具体的な手続き
⑥自己破産をする前に任意売却を検討しよう!
目次に沿って1つづつご案内していきますね。
①そもそも自己破産とは
自己破産とは、自分が持っている財産や収入では借金が返済できない場合に、裁判所から「支払いができない」と認められたうえ借金を免除してもらう手続きのことです。
自己破産を簡単にまとめると下記のようになります。
- ・借金を返済する義務から解放される ・原則、保証人以外に影響はない ・マイホームや高価な財産は処分される
自己破産をすると、借金を返済する義務から免れるので、借入先から督促が届くことはありませんし、電話がかかってくることもありません。
自己破産はあくまで個人的な手続きであるため、通常は家族や親族に影響が及ぶことはありません。※ただし、保証人になっている場合は本人に代わって請求されますので注意が必要です。
また、マイホームや高価な財産を持っている場合は、裁判所によってお金に換えられ債権者に分配されます。つまり、競売にかけられ、同居している家族はマイホームから出て行くことになりますので、安易な自己破産は家族に迷惑が掛かってしまいます。
以上のことから、「自己破産にメリット・デメリットはあるのか?」「自己破産をするとどうなるか?」「そもそも自己破産をする必要があるのか?」をしっかりと理解してから、手続きをするかどうかを検討したほうが良いでしょう。
②自己破産の4つのメリット
自己破産をすると、住宅ローン、カードローンなどの借金の返済が請求されなくなります。もちろん、電話や郵便などでの督促もなくなりますし、返済に追われないという点から人生を一度リセットして再スタートするという大きなメリットがあります。
しかし、多くの人にとって自己破産は、"できればしたくないこと"です。
その理由は、「なんとなく嫌だ」「イメージが良くない」「周りから反対されている」などの理由があるようです。
まずは、しっかりとメリットを確認していきましょう。
メリット① 返済義務が免除される
多くの方が、この"返済義務の免除"を目的に自己破産されます。
"返済義務の免除"とは、裁判所が「支払いができない状態」と認めたうえ、支払いを免除する決定をすることです。これを"免責許可の決定"と言います
この免責許可の決定により、それまでの借金の返済をする義務がなくなるというわけです。
メリット② 請求・督促がなくなる
自己破産を弁護士や司法書士に依頼すると、債権者である金融機関等に受任通知が郵送されます。受任通知とは、弁護士や司法書士が「私が債務者から債務整理の依頼を受けました。今後は私に連絡してください。」という内容の通知です。
金融機関等がこの受任通知を受けると、今後直接債務者に連絡、または、請求することは金融庁のガイドラインにより禁じられています。
よって、請求や督促がなくなるというわけです。
メリット③ 財産すべてを失うわけではない
自己破産というと、"お金になる財産はすべて取られる"というイメージを持っている方が多くいらっしゃいます。
実際、個人の場合はすべての財産を処分されるわけではありません。破産法という法律には次のような定めがあるからで。
破産法第34条
第3項 第1項の規定にかかわらず、次に掲げる財産は、破産財団に属しない。
1 民事執行法(昭和54年法律第四号)第131条第3号に規定する額に2分の3を乗じた額の金銭
2 差し押さえることができない財産(民事執行法第131条第3号に規定する金銭を除く。)。ただし、同法第132条第1項(同法第192条において準用する場合を含む。)の規定により差押えが許されたもの及び破産手続開始後に差し押さえることができるようになったものは、この限りでない。
どういうことかといいますと、次のようなものは奪われることはないということです。
①99万円以下の現金(預貯金は含まない)は没収されない
②20万円未満の預貯金は没収されない
③差し押さえが禁止されているもの
※差し押さえが禁止されているものとは、洋服タンス、ベッド、衣類など、生活に必要なもの等です。
引用)
メリット④ 誰でも申し立てることができる
裁判所が、「支払いが困難である」と認めれば、誰でも自己破産をすることができます。
とくに収入についての制限もありませんので、無職、生活保護を受けている人、主婦であっても自己破産をすることは出来ます。
もうどうにもならないといって、命を絶つ必要はないのです。
③自己破産の6つのデメリット
自己破産は、メリットがあると同時に当然デメリットもあります。次は、デメリットを確認していきす。
デメリット① "ブラックリスト"に載る
"ブラックリスト"とは俗称で、正式には信用情報機関が管理している"個人信用情報"というデータベースに"事故"として載ります。
"事故"として載ると、5~10年間は新たにローンを組んだり、クレジットカードを作ることは、ほぼできません。また、今使っているクレジットカードについては、当面は使用できますが、いずれ使えなくなる可能性が高いと言えます。
デメリット② 財産が処分される
原則として、20万円以上の財産、99万円以上の現金は処分されます。 生活に必要なものは、この限りではありませんが、「お金に換えられるものはお金に換えて借金の返済に充てなさい。」ということです。
デメリット③ 職業・資格に制限を受ける
自己破産の手続きを開始すると、免責が決定するまでの3~6カ月間は一定の職に就くこと、または、資格が制限されます。
警備員、生命保険募集人、弁護士、宅地建物取引士、税理士、司法書士、旅行業務取扱管理者、貸金業者、建設業者など
免責が決定すると解除されますが、信用問題にかかわることです。安易に自己破産はしないほうが良いでしょう。
デメリット④ 保証人に迷惑がかかる
債務者本人が自己破産をしても、それはあくまで個人としての手続きです。保証人や連帯保証人はは全くの別人です。自動的に保証人や連帯保証人が返済義務を免れることはありません。
当然、保証人の元へ請求されます。
そのため、保証人がいるにもかかわらず、何も知らせず自己破産をすれば、大きなトラブルに発展しかねません。
自己破産をする場合は、できるだけ早めに保証人に伝えて相談をしたほうが良いでしょう。
デメリット⑤ 高額な費用が必要
自己破産をする場合、多くの資料を準備したり、煩雑な手続きが必要です。専門家ではない、いわゆる素人が自分一人で自己破産の手続きをすることは事実上非常に難しいでしょう。
そのため通常は、弁護士、または、司法書士に依頼することになります。その費用はおよそ30万~60万円ほどです。
分割で支払うことを認めてくれる場合もありますが、高額であることに変わりはありません。
デメリット⑥ 官報に載る
官報とは、国が発行する新聞のようなものです。法律、政令、条約の決定事項などが載っています。
自己破産をすると、その官報に住所・氏名などが載ります。
ただし、一般の人が官報を見ることはほとんどないでしょう。
参考)
④自己破産すべきかどうかの4つの判断基準
当協会にご相談に来る方の中には、「任意売却=自己破産」と思っている方が多くいます。しかし、よくよくお話を聞いていくと、実は自己破産をする必要はまったくないという人がほとんどです。
なぜなら、任意売却をした後に残った住宅ローン(残債)については、"無理せず支払える限りで支払う"ことが可能だからです。
では、自己破産すべきなのは一体どのようなケースの人なのでしょうか?
ケース① 返済の見込みがないケース
住宅ローン以外の借金について返済の見込みが全くない場合、自己破産は解決手段の一つとなります。
借金が返済できない期間中、遅延損害金は膨れ上がります。滞納している期間が長ければ長いほど、どんどん遅延損害金が膨れ上がっていくのです。
一度線引きするためにも自己破産は検討すべきです。
ケース② 借入先が複数あるケース
借入先が、住宅ローンのみである場合は、まず自己破産する必要ないと言って良いでしょう。
対して、住宅ローン以外に複数の借金がある場合、例えば、5社以上のカードローンや消費者金融からの借金があり、かつ、滞納している場合は、督促だけでもかなりのストレスです。
こういった場合は自己破産を検討したほうが良いと言えます。
ケース③ 高額な資産がないケース
自己破産をする場合、生活に必要なものを除いて、20万円以上の資産がある場合は、お金に換えるために処分されます。
逆に言えば、処分されるものが無ければ、自己破産によるメリットが活かせるわけです。
以上の3つのケースに当てはまらない場合は、自己破産をしなくても良い可能性が極めて高いと言えます。今すぐ手続きをする必要はありません。まずは、すべきかどうかじっくりと検討しましょう。
⑤自己破産の9つの流れと具体的な手続き
自己破産のメリット・デメリットを比較して、それでもやはり自己破産をするとなった場合、どうすれば良いのでしょうか。
ここでは、実際に自己破産の手続きの流れを見ていきます。
①弁護士、または、司法書士を探す
まずは、誰に依頼するかを決めなければなりません。弁護士や司法書士の知り合いがいればいいのですが、そうでない場合は探さなければなりません。
インターネットで検索しただけで安易に依頼せず、信頼できるかよく見極めましょう。相性もありますので実際に話してみるのが得策です。
また、数回なら無料で相談できる「法テラス」もあります。こちらでは、費用の面などでも相談に乗ってくれますので、一度相談してみるのも良いでしょう。
②依頼する
実際に依頼します。依頼すると、受任通知が各債権者に送られます。これによって、直接の連絡や請求が止まります。
③自己破産と免責の申立手続
自己破産の申し立てが始まります。通常、自己破産する場合は「破産手続き」と「免責手続き」の二つの申立てが同時にされます。
「破産手続き」とは、財産を処分してお金に換えて債権者に返済することです。
「免責手続き」とは、返済する責任から免れる手続きです。
「破産手続き」だけでは、免責となりません。「免責手続き」を経てはじめて返済の責任がなくなるのです。
④破産審尋(しんじん)
「破産審尋」とは、裁判官が、返済能力がないかどうかを確認するため直接本人に話を聞くことです。「なぜ借金が膨れ上がったのか?」「なぜ返済できなくなったのか?」などが問われます。
⑤破産手続開始の決定
実際に様々な制限・様々な効力が発生します。破産管財人が選任され自分で財産の処分はできなくなります。
※破産管財人とは、破産者の財産を処分するために裁判所が選任する弁護士です。
⑦免責審尋(しんじん)
「免責審尋」とは、免責するに値する誠実な人物かどうかの確認です。「嘘をついてないか?」「住所・氏名・生年月日に変更はないか?」などが問われます。
⑧免責許可の決定
免責決定書が送られきて、借金の返済の責任がなくなります。
⑨官報に載る
官報に住所・氏名・主文などが掲載されます。
これで自己破産の手続きが完了となります。
⑥自己破産をする前に任意売却を検討しよう!
任意売却と自己破産の両方をする場合はどうすればいいのでしょうか?
順番としては、まずは任意売却で自宅をなるべく高く売却して、そのあとに自己破産の手続きに入るのがセオリーです。
自己破産は、いつでもできます。そのため、先に任意売却をして不動産の問題を解決した後に、ゆっくりと自己破産をすれば良いのです。
すでに自己破産の手続きをしている場合でも、同時に任意売却は可能です。この場合、私たちが依頼先の弁護士や司法書士と話し合いながら進めます。
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