仕事に追われて夫がうつ病になり、退職。収入が激減し、妻のパート代だけで…
阪口 晴彦 (仮名)様 38歳 会社員
相談者 | 源田明美 (仮名)様 |
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年齢 | 48 歳 |
職業 | パート |
家族 | 夫(50歳)、父(78歳)、娘(18歳)、息子(16歳) |
住所 | 東京都調布市 |
自宅は主人と父の共有でしたが、突然父が体調を崩し収入がなくなりました。結果としてローンの支払いが滞り保証会社より一括請求が届きました。父はステージ4の末期ガンです。父をゆっくりと看取り、少しでも手元にお金を残したいです。
一人っ子の源田さん。20年前にお母様が他界してしまったため、新居を購入する13年前にご主人の了解も得てお父様と同居することとなりました。
その際にお父様も実家を売り払い、新居の頭金として1000万円を捻出。ご主人と共有名義にし、一部住宅ローンを組みました。
お父様のお仕事は電気工事。職人として日々忙しくされていたそうです。
家計はそれぞれで賄っており、お父様はお父様で住宅ローンの支払いを行い、たまに娘息子の学費等で苦しい時はお父様が援助して下さる。そんなやりくりをされていたそうです。
しかしある時そんな日常は突然揺らぎ始めます。源田さんも数か月位前からお父様の体調がすぐれないことは気づいていらっしゃったのですが、パートやら娘息子の塾の送り迎えやらでせわしなく日々は過ぎ去っていきました。
しかしいよいよ辛そうにしているお父様を、無理やり病院に連れていくと、精密検査をしなければいけないということになり、あれよあれよと心の準備も整わないままお父様が「末期の膵臓がん」で余命3か月と診断されてしまいます。
その後源田さんにさらに追い打ちをかける事実がお父様から告げられます。実は体調を崩して収入が減少傾向にあったため、ローンが滞り保証会社から一括請求が届いていると。
なんとその額1300万円。とても返せる金額ではありません。家族だけで解決はできないと判断した源田さんは、このタイミングで当協会にご相談にいらっしゃいました。
まずはダメもとで源田さんと一緒に銀行に向かいました。もし数か月後に亡くなるようであれば団体信用生命保険でローンが完済されます。保証会社に債権が移っていればダメですが、その書類はまだ確認できていません。
いざ聞いてみるとまだ代位弁済されていないとのこと。3日後には手続きに入る予定だったそうです。
ホッとしました。そうすると対応は変わってきます。しばらくの間お父様の分の住宅ローンを支払い続けることが源田さんのベストな選択です。しかしそのようなゆとりは源田さんにはありませんでした。
そこで私はこんなご提案をします。1年後に引渡しをする前提で契約をしてくれる不動産業者の買主を見つけ出し、手付金100万円を受領。そのお金でお父様の住宅ローンを支払っていくのはいかがかと。
この案には源田さんもかなり喜ばれました。すぐに不動産業者も見つけられお金の心配をすることもなく、安らかにお父様を見送ることができたそうです。
最初に事実が発覚したときは何をしたら良いか全く答えが見つかりませんでした。しかし武井さんのご提案は「父を見送りたい」という気持ちと、「お金の心配」という葛藤を見事解決してくれました。もしあのご提案がなかったらあんなに心穏やかに父を見送れたのか自信がありません。
不動産という仕事は本当に人の人生の節目に立ち会う機会が多い仕事です。死を目前にしたお父様に会い、身の引き締まる思いがしました。自分の死よりも一人娘の先行きを案ずるお父様の想いに応えなければと、必死に不動産業者に交渉したのも良い経験です。お父様にご報告した時の涙を私は一生忘れはしません!