残された家族は、税金の滞納を共有することも。
全日本任意売却支援協会の生山です。
今回は共有者がテーマです。
自宅を共有で持っている場合、全共有者の同意がないと、売却できません。
例えば、夫1/2、妻1/2という持分にしている方は2人ともの売却の意思確認が必要です。
この共有のメリットは他の事例に詳しいので、ここでは割愛しますが、
デメリットとしては離婚や何らかの理由で連絡が付かない場合、
いつまで経っても売却できないということがあります。
たった2人の夫婦の間ですら、離婚問題などで困る事案が多く、
ご相談を頂くのですが、最近は相続でのご相談が増えてきています。
例えば、父親が死去して、母親、兄、妹が相続人になったケースを見ていきましょう。
東京にお住いの水谷恵子さん(仮名)は、42歳。結婚で実家の千葉から離れて暮らしていました。
6年前に父親が他界し、千葉の実家には母親と兄が2人で住んでいるという状況でした。
昨年の11月、千葉の役所から東京の水谷さんのところに、実家の公売予告通知が届きます。
実家から離れて住んでいる水谷さんにとっては、まさに寝耳に水でした。
「そもそも、何で私の所に父親の税金の請求が来るの??」
実は父親が死んでから、実家の相続のことを全くやっておらず、
自動的に実家の所有者(名義)が、母親、兄、そして水谷さんの3人になっていたのです。
この名義が強制的に確定されることを、代位登記と言います。
水谷さんの父親は、税金の未払いが、かなりありました。
役所が税金の回収のために千葉の実家を差押しようとした場合、
亡くなっている父親名義では差押が出来ません。
ですから役所が水谷さんの代わりに
自宅の所有者を法定相続人(母親、兄、水谷さん)として、差し押さえたのです。
つまり、父親の不動産とともに、税金の未納である負の遺産も、
水谷さんは知らず知らずのうちに引き継いでしまったのです。
当然、水谷さんにも税金の支払い義務があり、
不安に思った水谷さんは当協会にご相談に来られました。
長時間にわたる相談の結果、公売よりも任意売却で解決しようと決めたところ、
一番の懸念事項が、法定相続人で所有者になった「お兄さん」の存在でした。
水谷さんは、水谷さんが実家を離れて以降、
お兄さんとは10年以上お話をしていないそうです。
家庭内での問題があって、お互いがお互いを避けて暮らしたのです。
水谷さんからはお兄さんに直接お話ししづらい、とのことでしたので、
私が間に入って、お兄さんに話をしてみました。
しかし、お兄さんは、今回のケースについて「自分は関知しない」
という姿勢をとっていました。
お兄さんが住んでいる家が公売で無くなってしまうかもしれないのに、
それでも協力したくない、と言われました。
こうなると、もはや任意売却は難しいのです。
粛々と公売で家を取られる日まで待つしかないのです。
皆さんにお伝えしたいのは、
遠く離れたご実家のことが、いつかは自分に降りかかってくることもあるということです。
そして、今回、水谷さんはお兄さんとの共有でしたが、
仮にお兄さんも亡くなっていたとしたら、
お兄さんのご家族が千葉の実家の名義人となり、
全く面識ない人との問題になってしまう可能性があるのです。
ご自身のご家族などで、共有の問題でトラブルを抱えそうでしたら、
なるべく早めにご相談いただくことをお勧めします。
おわり
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