生活保護を見据えての任意売却(1)
こんにちは、任意売却コンサルタントの浜崎です。
任意売却を行う相談者の中には、精神疾患に苦しんでいる
方もいらっしゃいます。
精神疾患になってしまう理由は様々ですが、ほとんどの方が
仕事も出来なくなってしまい、必然的に住宅ローンの支払いも
出来なくなります。
住宅ローンを滞納すると、銀行から保証会社へ窓口が代わり、
督促やその後の競売という流れになるのですが、普通の精神状態
の方でさえ、大変ストレスのかかる出来事が続きます。
しかし、精神疾患を患っている方は、その倍以上のストレスを抱えて
対応していかねばならず、途中で逃げ出してしまうことや、諦めてしまう
こともあるのです。
今回は、精神疾患を患いながらも無事に任意売却が出来た方から
アンケートを送っていただきましたのでご紹介させていただきます。
東京都にお住いの野村さん(仮名)です。
野村さんはいくつかの仕事を経て、この15年ぐらいは宅配便の
ドライバーをしてきました。
労働環境が年々劣悪になる中で、少しでも改善できるよう数年前、
意を決して上司に進言したことがきっかけで、その上司から疎まれる
ようになり、野村さんに対するいじめが次第にエスカレートして来ました。
何とか歯を食いしばって耐えていた野村さんですが、陰湿ないじめが
1年も続くとさすがに精神的に参ってしまい、食事もノドを通らなくなりました。
次第に夜も眠れなくなり、運転中に睡魔に襲われることもしばしば起こったので、
野村さんは心療内科を受診しました。
そこで出された診断は、「うつ病」でした。
野村さんは、自分がうつ病になったことが最初は信じられませんでした。
しかし、日に日に体調が悪くなり、ついには出社することも出来なくなりました。
そして、その1か月後、野村さんは会社を退職しました。
最初は失業保険で生活をしていましたが、やがてそれも終わり、
わずかにあった貯金を切り崩しての生活が始まりました。
当然、住宅ローンの支払いも出来なくなり、固定資産税等の滞納も
始まりました。
銀行からは何度も何度も連絡がありましたが、うつ病になった野村さんは、
その電話に出ることさえも出来ず、やがて銀行の保証会社に競売を
申し立てられてしまいました。
税金も滞納が続き、自宅に差押を入れられました。
野村さんの周りで、いろいろなことが悪い方へ悪い方へと
進み始めてしまったのです。
野村さんは早くに離婚し、男手一つで2人の子供を育てて来ました。
2人とももう独立しましたが、自分達の生活で精一杯で、
とても野村さんの援助が出来る状態ではありませんでした。
また、野村さんも2人の子供達に余計な心配をさせたくないし、
ましてや援助してもらおうとも思っていませんでした。
しばらくすると、裁判所の調査が来たり、次第に自宅を失う恐怖が
迫って来ました。野村さんは、何とか競売を回避できないものかと調べる
ようになり、当協会に相談にお見えになったのです。
野村さんは、初めてお会いした時、とても怯えていました。
もちろん病気のせいもありますが、自分ではもうどうにもできない
状況になり、何をどうしたら良いかも分からなかったそうです。
しかし、今までの経緯や今後の生活のことを話すうちに、もしかしたら
何とかなるかもしれないという希望が少しずつ芽生えたようです。
そして、もし無事に任意売却し引越が出来たら、新たに仕事も
探して、また復活したいという希望を私にはっきりと語ってくれました。
今回のポイントは4つありました。
①銀行が住宅ローン全額に加えて、遅延損害金、さらに
競売の申し立て費用も全額返済を求めており、それが出来なければ
任意売却を認めてもらえないこと。
②税金の滞納で市役所の差し押さえが入っており、それも80万円に
膨れ上がっていたが、全額返済しないと差し押さえの解除がして貰え
ないこと。
③お金のない野村さんの為に少しでも引越費用を確保する必要があること。
④野村さんは無職でお金もなく、部屋が借りられないかもしれないこと。
今回は、買主を探す過程で、購入金額をギリギリまで上げてもらう
とともに、引き渡し猶予をもらうという条件で探すことにしました。
その理由は、銀行への返済と役所への税金の納付で、引越代が
無くなるので、野村さんには売買決済と同時に生活保護の申請を
してもらうことにしたからです。
生活保護の申請が通れば、お部屋を借りることも出来るし、
引越費用も補助していただけるのです。
しかし、生活保護の可否は申請から2週間を要するので、売買決済後、
最低2週間の引き渡し猶予が必要なのです。
買主にしてみれば、本当に明け渡しが出来るのか、生活保護が認められ
なかった時はどうやって引き渡してくれるのか等の不安要素があり、
条件を満たしてくれる買主を見つけるのに大変苦労しました。
ですが、何とか任意売却の道筋が出来きました。
あとは野村さんに報告し、契約を進める段階になりました。
しかし、大変なことは実はこの後にも待っていたのです。
▽▽続き▽▽
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