生活保護を見据えての任意売却(2)
こんにちは。
全日本任意売却支援協会の浜崎です。
今日は、前回の続きになります。
ようやく買主が見つかり、銀行や役所への配分のめども
経ったので、野村さんに最終の報告と意思確認のための電話を
いつものようにかけました。
その時は留守電になりましたので、メッセージを残しました。
いつも、その後メッセージを聞いた野村さんから当日中に折り返しが
あるので、気にもしていませんでした。
ところが、その翌日も折り返しがなく、また何度か電話しましたが、
相変わらず呼び出し音が鳴った後、留守電になりました。
その次の日も、さらにその次の日もまた電話しましたが、同じように
電話が留守電になるばかりで、野村さんと連絡が取れなくなったのです。
私は野村さんが、最初の頃、こう言っていたのを思い出しました。
「自分でも分からないのですが、ふとしたことで少し不安を感じると、
それがドンドン大きくなり、薬を飲まないと全く外にも電話にも出られなく
なることがありました。今は薬があるので何とかなっていますが、
薬がなくなったらどうなるか自分でも不安なんです。」
恐らく、野村さんは薬を処方してもらうお金も無くなり、今は身動きできなく
なってしまっている可能性があるのではと思いました。
しかし、競売の入札は約1か月後に迫ってきていたので、
今私があきらめたら終わりです。
私はすぐに野村さんの自宅に向かいました。
野村さんはお留守かどうかも分かりませんでしたが、
ドアチャイムを何度鳴らしても出てくれませんでした。
しかし、これまで新しい生活を目指して一緒に進めてきたので、
私はもう一度野村さんに勇気を出してもらいたく、
お手紙を残して来ました。
そして、それから1週間がたった頃、突然、野村さんから電話が
掛かってきたのです。
野村さんは最初電話の向こうで泣きじゃくっていました。
そして、いろいろ頑張ってくれている私に大変申し訳ないことをしたと
自分のしたことを悔いていました。
少し落ち着いてから話を聞くと、今後の生活に感じた不安がドンドン
増幅し、頼みの薬も切れていて、自分ではどうしようも出来ない
状態になったそうです。
私からの電話も鳴っていることは分かっても、どうしても出れる
精神状態でなく、苦しんでいたそうです。
でも、私が書いた手紙を読んでくれて、野村さんは
自分の為に一生懸命になってくれている私を裏切る
のは病気の苦しみ以上につらく、何とか震える手で
電話をかけてくれたというのです。
その告白を聞いた時、私は野村さんこう言いました。
「野村さん、よく電話してくれました。
今まで本当につらく苦しかったと思います。
でも、今こうして勇気を振り絞ってそれを乗り越えました。
これ以上につらいことはもうないです。
任意売却の成功はもう目の前です。
あと少し、一緒に頑張りましょう。」
野村さんはまた電話の向こうで泣きじゃくりながら、
こう言いました。
「ありがとうございます…ありがとうございます…
浜崎さんに絶対付いていきます。これからも宜しく
お願いします。」
それからは、一気に話が進み、あっという間に決済を
迎えることが出来きました。
銀行にも役所にも滞納しているものはすべてお支払い
出来ました。
しかし、今回の一番大事なことはこの後です。
生活保護の申請をすぐに行い、同時に生活保護でも
入居できる新居をすぐに探し始めました。
最悪、生活保護が許可されなくても野村さんが退去できる
方法もバックアップ案として同時に進めて行きました。
その2週間後、ついに野村さんの生活保護が認められました。
そして、新居も審査が通り、役所からの援助で、
野村さんは無事引越しが出来たのです。
買主への引き渡しの日、野村さんの自宅を買主と
訪問すると、一生懸命に掃除をする野村さんが居ました。
もう以前のどこか宙を見つめるようなうつろな目ではなく、
これから始まる新しい生活をしっかり生きていこうという
力強い目に変わっていました。
野村さんはこうおっしゃっていました。
「新しい仕事が見つかるまで、一時的に生活保護を受けますが、
仕事が見つかり次第すぐに保護を終了し、自力で生活していき
たいです。」
今回、うつ病という精神疾患が野村さんを苦しめましたが、
最後はやはり助かりたいという野村さんの精神力が上回り、
無事に解決することが出来ました。
相談者の中には同じように精神疾患に苦しんでいる方がたくさん
いらっしゃいます。
自分ではどうにもならない状態が来る時もあるし、周りに理解されない
ことも多いと思います。
しかし、諦めたらそこで終わりです。
野村さんは諦めなかったから成功したのです。
つぎはあなたの番です。
おわり
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