借地権付き建物の任意売却の進め方
こんにちは、任意売却コンサルタントの浜崎です。
全日本任意売却支援協会には、借地権付き建物を
所有されている方からの相談も数多く寄せられています。
では、そもそも「借地権」とは何か?
借地借家法という法律によると、
「借地権」とは、建物の所有を目的とする「地上権」又は「土地の賃借権」をいいます。
分かりやすく言うと、
「他人の土地を借りて、その土地に自分の建物を建てられる権利」です。
反対に「借地権」が付いた宅地の所有権を「底地」といいます。
借りる人の事を借地権者といい、貸す側の地主を借地権設定者または底地人
とも呼んだりします。
地主には、土地を借りる対価として借地権者は
毎月地代(土地を借りる家賃のようなもの)を支払います。
<借地権のメリット>としてあげられるのは、
①土地に対する固定資産税がかからない事、
②所有権を購入するより安く、借地権付き建物として借地権の権利を売却する事
も出来る等があります。
ただし、建物は自分のものでも、その下の土地は他人のものです。
<借地権のデメリット>としては、
①地代の発生
②建物賃貸借契約上・借地借家法上で地主との間にどうしても様々な制約が発生してしまう
という点が挙げられます。
今回は入札期間中に無事任意売却で競売を回避することが
出来た東京都にお住いの野村豊さん(仮名)の話をご紹介します。
野村さんは都内の下町に生まれたころから住んでいる
生粋の下町っ子です。
元々実家も祖父の代から借地権付き建物でしたが、父親が
亡くなった時、その借地権を相続し、その土地に自分で住宅ローン
を組んで新しい家を建てました。
仕事は店舗間の物流を担当するドライバーでしたが、
契約社員で時給の為、収入が安定せず、次第に住宅ローンを
滞納し始めてしまいました。
このままでは大変なことになると思った野村さんは、昨年10月に
転職し、今は社員雇用のトラックドライバーをしています。
しかし、転職してもすぐに給料が入って来ないので、滞納分を
まとめて支払うことが出来ずそのまま放置してしまいました。
仕事柄、昼夜逆転することも多く、銀行からの連絡や督促も放置してしまいました。
そして数か月が過ぎた頃、ついに裁判所から競売の開始を告げる書面が届きました。
大変なことになったと感じた野村さんはすぐにネットで検索し、
裁判所からの手紙を握りしめて相談にお見えになりました。
今回のポイントは所有権ではなく借地権という特殊な権利であり、
所有権に比べて取引されることが少ないので、一般の方には
あまり馴染みがない点と、借地権が故の制約・費用がかかる点でした。
特に費用面が大きく、借地権を他人に売却する際には譲渡承諾料として
地主に売買代金の10~15%の現金を支払う契約になっていることが一般的です。
例えば、1,000万円の売買だと100~150万円もの譲渡承諾料を支払わなければ
ならないので、買主は合計1,100~1,150万円を支払うことになります。
野村さんから依頼を受けて、すぐに債権者の銀行と交渉を
開始しましたが、銀行は残債務+遅延損害金+競売費用の
合計1,800万円全額の返済が出来なければ、競売で行くという
非常に強固な姿勢でした。
この1800万円にさらに譲渡承諾料と諸経費が合計300万円かかるので、
合計では2,100万円で販売しないと話がまとまらないのです。
ところが、野村さんのお宅は周辺相場から見ると、1,500~1,700万円だったので、
販売活動も大変苦戦しました。
そして、何とか条件に近い購入希望者を見つけては
差額を減額してもらう交渉をしましたが、銀行側の姿勢は
時間が経っても一切変わらず、とうとう開札まであと1か月
を切ってしまいました。
もう間に合わないのではないか…
野村さんも諦めかけていたその時、ようやく条件に適う買主が
見つかりました。
しかし、もう時間がありません。
すぐに契約準備を行うとともに、債権者と時間をギリギリまで
待ってもらう交渉を行いました。
そして、契約と決済を同日に行うことで、何と開札日の2日前に
任意売却を完了し、競売を取り下げることが出来たのです。
更に野村さんの引越代も上手く捻出することが出来たので、
野村さんはお金の心配をすることなく新しい家に引っ越すことが
出来ました。
野村さんは今回先祖代々の土地を離れることにはなりましたが、
またお金を貯めて、いつか自分の家をまた同じ地域に買うことを目標に
今も夜中の高速道路を安全運転で走り続けています。
おわり
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