父の思い、母の思いのために任意売却を。

こんにちは、任意売却の相談員・浜崎です。

 

全日本任意売却支援協会には、

“税金を滞納してしまい相続財産を差し押さえされたので何とかしたい”

という相談も寄せられています。

 

今回は、お父さんが亡くなった後に1棟のマンションを相続した方の事例です。

 


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埼玉県にお住まいの石田直子さん(仮名・50歳)のお父さんは、さいたま市のA駅の駅前商店街で

50年間も青果店とアパート経営をして来ました。

 

 

しかし、元気だったお父さんが10年前にガンと目の病気を患い、店に立てなくなりました。

当初は何とかお母さんが手伝い、何とか切り盛りしましたが、次第に売り上げも減少し、

店を閉めざるを得なくなりました。

 

 

今後の事を家族で話し合っていた頃、長期一括借り上げで有名なA社の営業マンが訪ねて来て、

青果店とアパートの敷地にマンションを建てて賃貸経営をしないかとの提案がありました。

 

 

A社が長期一括借り上げを行い、賃貸募集や管理も全て面倒見るからという事でかなり強い営業をされ、

石田さんのお父さんは決断しました。

そして、外資系の金融機関から3億円の融資を受け、20戸のマンションが建設され、新たに賃貸経営がスタート。

 

 

借り入れは石田さんとお父さんの連帯債務で、名義は2人の共有名義です。

A社の一括借り上げは、何から何まで全て代行してくれるので確かに便利でした。
しかし、様々な手数料を引かれ、修繕費も高く、

石田さんの手元にはギリギリ生活が出来るだけのお金が残るだけ・・・。

 

 

A社の説明が不十分だったのか、石田さんが素人でよく理解してなかったのか、

今となっては分かりませんが、次第に当初の計画と収支が合わなくなってきたのです。

 

 

わずかな家賃収入から様々な費用を捻出していると、そのうち、今度は毎年掛かってくる市税、

県税、国税の支払いが滞るようになりました。

 

 

そして3年前、長く病気を患ってきた最愛のお父さんが他界し、

石田さんはマンション(お父さんの持ち分)と合計2億数千万円の債務を相続したのです。

 

 

石田さんはお父さんを失った悲しみも癒えないうちから、

各税金の督促や賃貸経営にかかるお金のやりくりに頭を悩ませる日々が始まりました。

 

 

各税金は分割で少しずつ支払いましたが、延滞金が年14%で発生しており、払っても払っても追いつかない状況です。

マンションのローンも滞納するわけにはいかず、毎月毎月が自転車操業の状態でした。

 

 

それでも何とか2年間頑張って来て、役所も石田さんの事情に出来るだけ配慮してくれていましたが、

とうとう今年の3月に市税の滞納額が1,000万円を超えたことから、マンションが差し押さえられてしまいました

 

 

差し押さえされただけならまだ頑張れたのですが、A社がその差し押さえを理由に、

契約上新規の賃借人の募集を中止すると通告してきたのです

 

 

これには石田さんはさすがに異議を唱えましたが、契約上そうなっており、

募集をしたかったら差し押さえを自分で解除してくれとのことでした。

 

 

「今でも自転車操業なのに、1,000万円を自分で用意するなんてとてもできない…」

「でも何とか秋までにはお金を工面しなければ…」

 

 

それから、1戸空き、2戸空き…9月に入ったころ、ついに4戸目が空きました。

しかし、4戸空いてもA社は賃借人を募集してくれません。

 

 

4戸分の収入が減り、もう石田さんは限界。ついに覚悟を決め、当協会へご相談に来られました。

 

 

私は、日々の生活にも困窮している状況をお聞きして、任意売却のご提案をしました。

石田さんはすぐには決められなかったのですが、一度お母さんと相談するという事になりました。

 

 

お母さんは一人娘の石田さんにすべての負担をかけてしまっていることに、とても心を痛めておられました。

 

 

「一緒に苦労をしてきたお父さんの唯一残してくれた大切な財産だから、娘にはなんとか残してやりたい…」

お母さんのこの言葉は今でも胸に残っています。

 

 

とはいえ、お金のことでもうどうにもならない状況になっており、

いよいよマンションのローンも滞納する日が近づいてきていました。

 

 

このまま行けば競売でこのマンションを取られてしまう。

A社にはさんざんひどい目に合ったかもしれないが、今何とかしなければ、本当に手元に何も無くなってしまう。

 

 

石田さんもその事は十分に分かっていました。

そして、ついに売却の意思を固めました。

 

 

このころには私と石田さんにはお金だけではない信頼関係も出来ていました。

 

 

今まで石田さんのお父さんがどんな人生を送って来て、どんな思いでマンションを建てたか。

そして今、お母さんが石田さんへどんな思いを持っているのか。

 

 

石田さん自身が今どんな苦しみを持っており、この先どんな不安を抱いているか。

何度もお話しするうちに、その思いを共有出来ていました。

 

 

石田さんの顔は話をするうちに少しずつ安堵の表情になり、涙を流しながら最後にこうおっしゃってくれました。

「浜崎さんのご紹介する方なら、もう騙されないと思います。よろしくお願いします。」

その後、契約。そして諸所の引継ぎも終わり、決済も無事終了しました。

 

 

石田さんは借金、税金から解放され、新たな生活を始めました。

先日お電話をいただき、ずっと行けなかった温泉旅行に、

近々母娘2人で行く予定ですと楽しそうな声でおしゃっていました。

 

 

今回の売却は、人間関係の大切さを改めて実感するものでした。

金銭的な満足ももちろん必要ですが、思いの通じる相手に頼みたい、

そして早く解決したいというご相談者の気持ちも大切にしていきたいと思います。

 

おわり

 

 

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