経営者の任意売却とリースバックの事例(後編)

前編の続きです。

引退後の幸せな生活を想定していた豊崎さんは、今すぐに動かないと家を失い、悲惨な老後になると思いました。

豊崎さんはインターネットで「任意売却」のことを知り、さらに、家を売却してもそのまま自分の家に住み続けることが出来る「リースバック」というものがあることを知りました。そこで、リースバックの取り扱いの多い当協会にすぐにご相談にお見えになりました。

今回のポイントは3つ。

① 銀行口座の凍結で生活費が引き出せず困窮していたので、すぐに任意売却をする前提で一旦銀行口座の凍結を解除してもらう必要がある。

② 会社の債務の返済を条件にされてしまうと、自宅の売却代金だけでは弁済が出来ないので、一旦住宅ローンの弁済だけで任意売却を許可してもらう必要がある。

③ 住宅ローンの残債務が、豊崎さんのマンションの相場価格より多く、いわゆるオーバーローンの状態だったので、リースバックを成立させようにも投資家が手を出しにくい可能性がある。

 

先ずは、①の銀行口座の凍結について、すぐに銀行と交渉し、任意売却の期限を設定することで一旦解除してもらうことに成功しました。

次に、②の住宅ローンの弁済だけにする件についても、銀行と交渉し、会社の残債務は個人でも無理なく返済できるよう少額の分割弁済案を作りました。それが認められ、今回は住宅ローンの返済に少しの返済をプラスしただけで任意売却を進める了承を得ることが出来ました。

最後に、③のリースバックのための投資家ですが、やはり当初の予想通り、オーバーローンが影響し、協力を申し出てくれる投資家が見つかりませんでした。そこで、豊崎さんにも頑張ってもらい、少し家賃を上げることで、利回りを改善し、1社からリースバックの申し出を受けることが出来ました。

 

ようやく条件もまとまり、あとは家賃保証の審査と契約だというところで、新たな問題が勃発しました。

家賃の保証会社の審査を受ける際は、賃借人に何かあった時の緊急連絡先を申告するのが一般的です。緊急連絡先の方は当然賃借人がトラブルを起こした場合も連絡を受けます。

今回豊崎さんは他の県に住む、親戚の方にお願いしたところ、その親戚の方から緊急連絡先になることを拒否されたのです。理由は親戚とはいえ、他の方の困りごとにあまり関わりたくないというものでした。

 

他に身寄りのない豊崎さんは困ってしまい、一度審査が中止になりました。このままでは時間だけが過ぎると、競売が始まってしまう可能性もあったので、投資家と交渉しました。

すると、今回は特別に家賃の保証会社を通さないで、数か月分の家賃を先に預けることを条件としてリースバックすることを約束してくれました。豊崎さんもその条件なら可能という事で、その後、任意売却と同時にリースバックをすることができました。

 

無事にすべての手続きを終え、豊崎さんと奥さんは当初思い描いていたような幸せな引退生活を始められました。

豊崎さんは最後にこうおっしゃっていました。

「予想だにしなかった危機が降りかかって来た時、正直頭の中が真っ白になって、何にも考えられませんでした。しかし、その不幸を嘆いていても、何にも変わらないことに気づき、すぐに動き始めて本当に良かったです。あの時すぐに動いていなかったら、今頃は家も失い、悲惨な老後生活を送っていたと思います。」

おわり

 

>>任意売却とリースバックで住み続ける