任意売却と破産の順序について
一般社団法人全日本任意売却支援協会の鈴木です。
今回は、前回の続き「破産と任意売却の関係」について解説します。
■先に破産してはダメな理由その2
「破産管財人と銀行は利益相反する関係?!」
住宅ローンの抵当権は「別除権」と言われており、通常の債権と比べ特別な取り扱いがなされております。
簡単にいうと、銀行は抵当権の実行(競売)により優先的に債権の回収が可能な立場にあるワケです。
つまり「任意売却するのはいいけど、自分達が思っている回収額以下だったら競売の方が良い」と判断されてしまいます。
もし破産管財人が主導する任意売却の場合、売買代金の配分に破産管財人の報酬が算入されます。一般的には売買代金の3~5%、時には10%を要求する破産管財人もいたりします。
例をもとに、銀行への配当金額を見てみましょう。
例)下記の自宅を任意売却するとします。
住宅ローンの残高:3,500万円
競売落札予想価格:2,500万円
任意売却した場合の価格:2,700万円
①破産管財人が主導する任意売却の場合
費用 内訳 |
破産管財人報酬:約135万円 |
仲介手数料:約94万円 | |
司法書士報酬:約5万円 | |
不動産鑑定料:約20万円 |
費用の合計は254万円です。
よって、2,700万円(任意売却価格)-254万円(費用合計)=2,446万円
つまり、銀行の手取り金額は約2,446万円となります。
競売落札予想価格(2,500万円)と比較すると、銀行の回収額は約54万円少なくなります。
②破産管財人なしの任意売却の場合
費用 内訳 |
仲介手数料:約94万円 |
司法書士報酬:約5万円 |
費用の合計は約99万円です。
よって、2,700万円(任意売却価格)-99万円(費用合計)=2,601万円
つまり、銀行の手取り金額は約2,601万円となります。
競売落札予想価格(2,500万円)と比較すると、銀行の回収額は約101万円多くなります。
いかがでしょうか。両者の差額は、なんと155万円にもなります。
銀行としては、破産管財人が主導する任意売却は好ましくないのです。そればかりか、競売のほうが多く回収できてしまうのです。
先日来られたのご相談者は、任意売却の業者を破産管財人がすでに選定しており、当然ながらリースバックの相談など受け付けてもらえませんでした。
さらに「その業者に協力しないと免責の許可が得られませんよ」とまで言われたそうです。
ただし、単純に“破産管財人が悪い”ということではありません。
破産管財人は「仕事として報酬を得たい」という立場になり、対して銀行は「少しでも多く回収したい」という立場となり、両者は利益相反する関係になるのです。
また、破産管財人の報酬分を上乗せするために売却金額が上がるということは、リースバックに協力する投資家の数は減り、かつ、家賃も高く設定されることになります。
ハードルは当然上がりますよね。
以上、2回にわたって「破産と任意売却の関係」について解説しました。
[もっと役立つ情報を知りたい方はこちら]
任意売却と「管財事件」「同時廃止」
一般社団法人全日本任意売却支援協会では、基本的には、任意売却の後に自己破産をすることをおすすめしています。