自動的に競売が取り下げられる?
「家が競売にかかりました。住宅ローンを滞納したわけではなく、カード会社から申し立てられました。」
「実は、他社に相談に行ったところ、『無剰余の取下げになるから大丈夫ですよ』と言われました。ところが、実際は取り下げられずに競売続行となりました・・・助けて下さい!」
こんなご相談を、千葉県の片田さんからいただきました。
「無剰余の取下げ」
あまり聞かない言葉だと思います。まず、この言葉から解説していきます。
「無剰余の取下げ」とは、第2順位以下の抵当権者が競売を申し立てた場合、第1順位の抵当権者がその競売を取り下げることです。
多いケースとしては、住宅ローンの借入先の銀行が第1順位の抵当権者となっていて、カード会社や個人が第2順位以下の抵当権者として申し立てるケースです。
では、なぜ取り下げられるかというと・・・仮にその家が1,000万円で売れるとします。住宅ローンが1,200万円残っている場合、競売で強制的に売られてしまうと、第1順位の銀行は、住宅ローンが回収できず困ってしまうからです。
だから、第1順位の銀行が全額を回収するべく「競売では売らせない、だから取り下げます」というのが無剰余の取下げです。
さて、今回の片田さんのケースですが、他社は下記のように計算したようです。
家の価値:1,000万円
銀行(住宅ローン)の残債:1,200万円
カード会社の残債:70万円
この場合、カード会社が70万円を回収するために競売を申し立てても、銀行が全額を回収できないため、無剰余の取下げになるだろうと考えていたようです。
ところが、実際は、銀行が片田さんの家の価値を1,200万円くらいと計算したのです。
つまり、銀行としては、競売になったとしても1,200万円を丸々回収できる計算ですので、競売を取り下げる必要はないのです。
一方、競売をかけたカード会社は全く回収をすることが見込めませんが、それでも裁判所は通常のスケジュールで競売を進めていきます。
無剰余の取下げになると思っていた片田さんは、競売の続行決定に焦り、当協会にご相談に来られました。
片田さんの場合、結果的には任意売却で無事に解決しました。しかし、「きっと無剰余になるだろうから、何もしないでおこう」という選択は、非常に危険だということがお分かりになったと思います。
終わり