共有者が失踪した場合の任意売却(2)

皆さんこんにちは。全日本任意売却支援協会の新井です。

 

今回は前回のSさんのお話の続きです。

共有者の息子さんが失踪してしまっている状況から、現在の状況、

今後の見通しについてお話をしたいと思います。

 

 

家庭裁判所への申し立て

 

まず、Sさんの自宅の状況をお伝えします。

 

■自宅の相場=2,580万円

■住宅ローンの残債務=約2,000万円

■名義=Sさん4分の1・息子さん4分の3

■現在住宅ローンの返済が滞っている

■息子さんは失踪しており、手がかりすら掴めない

 

以上が大まかな現状です。

 

見ていただいたら分かるように、普通に売却をすれば、

住宅ローンが完済できる価格で自宅を売る事ができるのです。

しかし、息子さんが失踪している事と、滞納が続いていた事もあり、

銀行からは競売の申立てを行うと言われており、

Sさんご家族は窮地に立たされている状況で当協会へご相談に来られたのです。

 

前回のブログでもお伝えしましたが、

自宅を売却するには共有者である息子さんの協力が不可欠です。

※法的には、Sさんの持分(4分の1)のみを売却する事も可能なのですが、

それでは売却価格が住宅ローンの完済額に届かない為、銀行が認めてくれず、実質売却は不可能な状況です。

 

では、このままどうする事も出来ないのでしょうか?

 

答えはNOです。

このような状況でも解決する方法はあります。

 

今回のSさんのケースでは、ある方法(制度)を用いて、売却を可能にしました。

 

 

その方法とは?

 

不在者財産管理人選任という制度です。

「不在者残債管理制度とは、不在者が従来の住所又は居所に財産を放置し、

財産の管理人を置かなかった場合などに、不在者の残務を整理し、

もって本人の利益のみならず同人相続人・債権者など利害関係人の利益を

保護する為に設けられた制度です。」(東京地判昭和56年10月23日)

 

今回、この不在者残債管理人の選任を家庭裁判所に申立て、

受理がなされたので、自宅を売却する事が可能になりました。

 

受理がなされたのはほんの数日前の事で、これから、Sさんの希望通り、

自宅の売却活動を行っていく流れとなっております。

 

これにより、住宅ローンの完済が出来る事がほぼ確実になり、

さらには新しく生活を始めるにあたり、ある程度の費用がまかなえる可能性が極めて高くなりました。

 

ようやく、ご家族にも少し笑顔が戻ってきた印象を私自身も始めて感じる事が出来たのです。

 

一つ、大きな重荷から解放できるようになった事は私自身も素直に嬉しいです。

 

ですが、本人が失踪している事実は解決する事ができません。

まだまだご家族は心配を抱えながら過ごす毎日が続きます。

 

私が出来る解決を全力で行い、

少しでもご家族のサポートが出来れば幸いです。

 

おわり