“酸っぱいぶどう”と“甘いレモン”
心理学において“防衛機制の合理化”と呼ばれるものがあります。
葛藤や罪悪感を伴う言動を正当化するために社会的に
許されそうな理由付けをすることをいいます。
ちょっと、わかりにくいですね。
これを分かりやすく解説したイソップ童話があります。
1匹のキツネが美味しそうなブドウを取ろうと飛び上がりますが、
高いところになっていることから、採ることができません。
「あのブドウはどうせ酸っぱいに違いない」と言って、
採ることを諦めることを“酸っぱいブドウの理論”といいます。
目的や欲求が満たされなかったときに、
その欲求と現実のギャップを埋めるために、自分の都合のいい
理屈で埋め合わせをしようとする心理的メカニズムです。
この防衛機制の合理化には、もうひとつあります。
“甘いレモンの理論”です。
これは、どんなに酸っぱいレモンでも、自分のものである限り、
甘いと思い込もうとするものです。
大抵の人は自分のもっているものが良いものであると
思いたがるか、良いものであってほしいと願うものです。
せっかく手に入れたものが、自分の想像より価値が低い場合に
心に大きな負担がかかります。
無意識にそれを避けようとする心理的メカニズムが
甘いレモンの理論です。
この酸っぱいブドウと甘いレモンの理論。
当協会(一般社団法人 全日本任意売却支援協会)に寄せられる
相談でも度々、耳にすることがあります。
酸っぱいブドウは、「競売になってもいいんだよ」という
諦めの境地からでる言葉です。
一方の甘いレモンは、「うちの家は基礎がすごい。○メートルもある」
「この家を買いたい人がいるというチラシがよく入る」
などというものです。
本音と建前というのがありますが、
口からでる言葉が全て本音とは限りません。
いろんな感情から出てしまうこともあると思います。
もし、理想やきれいごとばかりを追求して、
そもそもの目的である競売を避けることが達成できなければ、
意味がないのです。
ですから、私は任意売却の相談員に、この心理学を伝え、
相談者の方の本当のニーズを聞きだすこと、
具体的に、実際の解決策を提示していくことの重要性を言っています。
目の前のブドウは酸っぱいですか?レモンは甘いでしょうか?
正確に見極めて、解決していきましょう。