子どもの言葉
これまで何千件もの相談を受け付けてきましたが、
特に印象に残っている案件がいくつかあります。
私の場合、子どもが絡んだお話をよく聞いた相談者ほど、
印象に強く残っているようです。
金原さん(仮名:当時45歳)は、建築関係の仕事をされていました。
いわゆる1人親方と呼ばれるもので、仕事が続いているときは良いが、
収入の不安定さは激しく月額300,000円以上も差があるときもあるというのです。
そんな金原さんに悲劇が襲ったのは2008年10月に起こったリーマンショック。
建築関係にも大打撃を与えました。
金原さんの仕事も収入も激減。
貯金もなかったことから、住宅ローンを滞納するまであっという間でした。
金原さんから相談を受けたのは、その頃です。
電話を受けた翌日にお会いすることにしました。
子煩悩な金原さん。
お金や住宅ローンンのことより、子どもの話が大半でした。
「仕事がなくて毎日家にいます。
小学校の子どもが学校から帰ってくる時間にも家にいることが多いです。
お金のことで妻とケンカが耐えないのです。
それを見かねた子どもに言われた一言が耳から離れないのです。」
金原さんが子どもに言われた言葉とは・・・
「仕事に行って」
子どもとして、お父さんとお母さんがケンカをしている姿ほど、
胸を痛めつけられる思いはないものです。
ケンカの原因はお金だから、お父さんさえ仕事にいけば
ケンカはなくなると思ったのでしょう。
子どもの話になると涙を流す金原さん。
「街を歩いているとつい下を見てしまうのですよ」
「どうしてですか?」
「お金でも落ちてないかな。なんて考えてしまうのですよ」
お金の問題は誰にとっても切実な問題です。
ましてやそこに家族、家庭が絡むと、その切実さが何倍にもなります。
結局、任意売却は無事に成功し今は賃貸マンションに住まれています。
先日、久しぶりに連絡を頂きました。
「震災以降、ずっと東北にいます。忙しいです」
「お子さんはどうされていますか?」
「たまに帰って来てよ。とせがまれています」とのこと。
“仕事行ってよ”と言われていたのが、
“たまには帰って来てよ”に変わりました。
そのような状態になったことも嬉しいし、
そのようは報告を下さることも嬉しいです。
子どもの言葉は親にとっては深く考えさせられますね。
お幸せになって頂きたいです。