老後破産と繰り上げ返済
老後破産という言葉をご存知ですか?
これは、主に60歳を超えた方が生活に行き詰まり
住宅ローンの返済はもとより、普段の生活費にも
困窮してしまう状態をいいます。
私ども全日本任意売却支援協会に相談に来られる方も
年々、高齢化してきており、老後破産の多さを実感しています。
老後破産を防ぐにはどうすればいいのか・・・?
私の見解は・・・
『とにかく現金を手元に置いておく。』
老後破産が多くなっていることから、
週刊誌などに、“老後破産を防ぐために”という
特集が組まれたりしています。
そこに書かれている多くは、定年を迎える60歳には
「住宅ローンを繰り上げ返済した方が良い」などと書かれています。
私はこれに異議があります。
以前、このような相談がありました。
定年を迎え数百万円の退職金を手にされたAさん。
退職金の全額を住宅ローンの繰り上げ返済に充てられました。
しかしその後、再就職ができなかったAさん。
年金だけでは、生活ができなくなり、
消費者金融からの借入れなどが膨らんでしまいました。
また、退職金で繰上げ返済した住宅ローンも
全額を返済したわけではありませんでした。
その結果、住宅ローンの支払いも滞り、
競売の申し立てをされるようになってしまったのです。
私の元へ相談に来られたときには、時すでに遅し・・・
競売の入札が終わっていて、
もうどうすることもできませんでした。
その後、自宅を競売で失ったAさんは家族と共に、
公団で暮らしており、今では再就職先も決まり、
安定した収入をえていらっしゃっています。
繰り上げ返済をせずに、従来どおりの返済をしていれば、
自宅を競売で失うまでにはならなかったので、
繰上げ返済したことを後悔されていました。
住宅ローンの返済は、“期限の利益”という
分割での支払いを許されています。
週刊誌などでは、繰り上げ返済をすると、
その分の利息が安くなるということで、
繰り上げ返済を推奨しています。
確かにそうかもしれませんが、今の住宅ローンの利息は
大方1%台です。安い方なら0%台の利息の方も多くいます。
その利息がもったいないからと言って、手元の現金を
少なくしてしまうことは、大きなリスクであるのです。
高齢になれば、病気の治療などの緊急を要する費用が
発生することもありますので、住宅ローンの繰上げ返済は、
くれぐれも慎重になさって下さい。