感情と勘定
相続や離婚の際に起こるお金のことでトラブル。
そこには、ふたつの“かんじょう”が湧き上がります。
“感情”と“勘定”です。
言うまでもありませんが、
感情は心の部分。勘定はお金の部分です。
相続税の基礎控除が減額され、これまでより多くの方が
納税対象になることから、相続税に関して不安を示す人が増えています。
昨年の話になりますが、相続に関して相談がありました。
私が相談を受けた時には、既に兄弟姉妹で訴訟合戦中でした。
「家ではなんですから・・・」と、
案内されたのは、近くの洋食レストラン。
これまでの経緯の話し聞き、裁判資料にも目を通しました。
相続争いの典型的な事例でした。
相続問題は、実はものすごく単純なのですが、
“感情”と“勘定”が入り乱れますから、複雑化するのです。
話がエスカレートし、思い出しムカつきされると、
大抵、感情があらわになります。
「縁を切る」とか「あの野郎」とか「恩知らず」とか
次から次へと悪口のオンパレードになります。
私に相談を持ちかけたのは、その家の長男さん。
弟、妹と争っていました。
その長男さん・・・
目の前のナイフとフォークをジ~と見つめ、
ナイフに手を伸ばしました。
「今、目の前に弟と妹がいれば、これで一突きしてやりたい」
「・・・・(怖い)」
感情がもつれると勘定は合ってきません。
「私の方が親の面倒を見た」
「お前の方が親に迷惑をかけた」
挙句は子供の頃の話まで飛び出すこともあったりします。
相続するまでは、仲が良かったことがウソのようです。
それでも、「“感情”と“勘定”は分けて話ししましょう。
裁判所も感情のことは聞いてくれませんよ」となだめます。
「勘定合って銭足らず」という言葉がありますが、
相続争いの場合は、「感情を合わせると銭が足りる」となるのです。
感情は私には解決できませんが、勘定はなんとかできそうなので、
根気強く話し合いに付き合いたいと考えています。