『権利関係が複雑な任意売却』について

こんにちは。
全日本任意売却支援協会の藤本です。
任意売却のご相談を頂いておりますが、権利関係が複雑な場合が多々あります。
今日は、その権利関係が多い場合の任意売却の考え方について書いていきたいと
思います。
ちなみに『債権者』とは債務者に対して金銭の請求を行うことができる人です。
住宅ローンの話で言えば、銀行・信金などが債権者となります。
また『債務者』とは、『債権者』の逆の意味で、特定の債権者に対してお金を
支払わないといけない人や一定の給付義務を持っている人のことを指します。
住宅ローンの話で言えば、毎月住宅ローンを支払う所有者のことを指します。
本題に戻りますが、債権者が複数いるというのは、例えば住宅ローンだけでなく、
税金(固定資産税・住民税・相続税・健康保険料・国民年金など)や管理費・
修繕積立金、カードローン・カーローン・教育ローン・借地の地代・個人からの
借入などを滞納している場合です。このような場合は、任意売却に関係する債権者
が複数介在することになるので、それぞれと話をしていかなければなりません。
債権者が複数いる場合は、任意売却成立後も返済していく先が複数になる場合が
ある訳ですが、やはり住宅ローンだけを滞納している場合と、住宅ローン以外も
滞納している場合とでは交渉も異なってきます。
この場合、肝となるのは『いかに各債権者へ適切な配分が行われるか』が大切です。
というのも、どこか一か所でもでも債権者が売買代金から配当される金額に納得
いかなければ、任意売却が成立しないためです。
例えば、下記のような滞納があり、かつ債権者から差押が入っているような場合
※下記数字は概算
売買予定金額 3,000万円
①住宅ローン 3,000万円(第一順位:金融機関)
②管理費等 50万円(第二順位:管理組合)
③税金 300万円(第三順位:役所)
④カードローン 200万円(第四順位:消費者金融)
※仲介手数料 約106万円
※引越し代 20万円
※抵当権抹消費用等 約5万
|
債権額(万円) | 3,000万円の内訳 | |
配当(万円) | 応諾価格(万円) | ||
金融機関
(第一順位) |
3,000 | 3,000 | 2,750 |
管理組合
(第二順位) |
50 | 0 | 50 |
役 所 (第三順位) |
200 | 0 | 50 |
消費者金融
(第四順位) |
100 | 0 | 20 |
※仲介手数料 | – | – | 105 |
※引越し代 | – | – | 20 |
※抹消費用等 | – | – |
5 |
上記のような場合、仮に3,000万円で購入者が見つかりそうだったとしても、
第一順位の金融機関が「自分のところの配当を減らすつもりはない」と言われて
しまったら、もうこの時点で任意売却は成立しません。
ただこのまま競売になり、落札価格が3,000万円を大いに下回る可能性がある場合、
第一順位の金融機関も売買に掛かる諸費用(仲介手数料・引越し代・抹消費用等)
や後順位への一部配当金を差し引いたとしても、競売落札価格よりもメリットある
金額であれば応諾価格を下げてくれる可能性があります。
仮に競売落札価格が1,800万円くらいになるようであれば、当然ですが住宅ローン
を付けている第一抵当権者から順番に配当されますので、第一順位も全額回収でき
ませんし、後順位には全く配当がない事になります。
今回の例に則って、諸費用(仲介手数料・引越し代・抹消費用等)や後順位への
一部配当金を差し引いたとして、残りの後順位の債権者は、第一抵当権者が配当
に回してくれた金額内でそれぞれが納得してもらわないといけません。
本来的には、抵当権を付けた順番に債権を回収する権利がある訳ですが、先に
述べましたように、競売になってしまったらそもそもに配当がないですし、第一
順位の債権者が回してくれた配当を第二順位の債権者が欲張って全額回収しよう
ものなら、第三および第四順位の債権者は競売と同じ配当なしの結果になります。
もしそうなろうものなら、第三および第四順位の債権者は任意売却に応じる必要
がなくなりますよね?そのため、私たち支援協会は「配当が全くない」ということ
にならないよう各債権者と交渉していかなければなりません。
恐らく、この記事をよんでいらっしゃる方の中には、今回の話のように住宅ローン
以外にも支払いが難しくなってしまって差押等が入ってしまって困っている方も
いるかと思います。
こういった交渉事は最初の対応が非常に大事です。
早いご相談が解決への第一歩になりますので、一度当協会へご連絡下さい。